発表された2つの対策
保険証の廃止に反対する声に動かされたかたちで、8月4日には次のような対策が発表された。
【1】資格確認書の有効期限は最長5年で、マイナ保険証を利用できないすべての人に職権で交付する
これまでは本人の申請が必要で最長1年間有効という方針だったが、これが5年間と大幅に延長された。
また、本人申請がなくても保険者(健保事業者)が職権で発行できることになった。もし本人申請が原則だと、わざわざ窓口や郵送で申請する必要があり、問い合わせが殺到して発行に時間がかかることも予想されていた。職権で発行する具体的な仕組みはまだ不明だが、交付にあたっての懸念は、一部改善されたのではないだろうか。
【2】資格確認書の様式は、今の保険証と同じ紙やプラスチックのカード型も検討
資格確認書は、現行の保険証と同様に、紙やプラスチックの材質で、カードサイズのものも検討されることになった。これまではA4サイズや三つ折りの紙書類も想定されていたが、ほぼ保険証と同じものになりそうだ。「これでは保険証と同じではないか」との指摘もあるが、資格確認書の名称にこだわったのは、あくまでも「暫定的な扱い」ということを強調したいのかもしれない。
最終的にはマイナ保険証に一本化したい考え
現在の法令上で、正式に資格確認できるのはマイナ保険証だけだ。2019年に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立したことにより、オンライン資格確認(つまりマイナ保険証)が導入された。このときの健康保険法等の改正で、条文から「被保険者証」という言葉が「電子資格確認」に置き換わっている。現在、医療機関で保険証が使えるのは、あくまでも経過措置という位置づけだが、周知不足のため、このことはあまり知られていないようだ。
今回発表された対策は、健康保険証の廃止時期を延期するのではなく、資格確認書の運用を柔軟化するというものだ。とはいえ、資格確認書はあくまで経過措置であり、政府は最終的には、マイナ保険証でのオンライン資格確認に一本化したいという考えだろう。