来年秋に現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカード(マイナカード)に一本化するという政府の方針を巡って、大混乱が生じている。マイナ保険証に別人の情報が紐付けられる誤登録などが相次いで発覚し、政府は河野太郎・デジタル担当相を責任者とする総点検本部を立ち上げるなど対応に追われていているが、“泥縄式”の対策で、そもそもなぜマイナ保険証に一本化する必要があるのかの意義さえよくわからなくなってきている。
7月4日の松本剛明・総務相の会見では、記者から「高齢者施設など入所者から健康保険証を預かっている施設では、マイナ保険証とセットになる暗証番号の管理までしなくてはならなくなることに懸念の声が出ている」という主旨の質問が出た。それに対して松本氏はこう述べた。
「福祉施設などからは様々なご意見をいただいておりまして、認知症などで暗証番号の管理に不安がある方が、安心してカードを利用でき、代理交付の際の代理人の負担軽減にもつながるように、暗証番号の設定が不要なカードの申請受付・交付について、今年11月頃から開始できるように、今検討をしております」
マイナカード取得に際しては4ケタの暗証番号を設定する必要があり、カードと暗証番号があればマイナポータルにログインしてのオンラインの行政手続きなどが可能になるが、「暗証番号なしのマイナカード」は用途を実質的に保険証だけに制限し、顔認証や医療機関スタッフの目視により、資格確認を行なうものだという。都内の高齢者施設の関係者はこうため息をつく。
「保険証の機能しかないマイナカードなのであれば、今の保険証のままでいいじゃないですか。今の保険証と比べて、“顔写真つき”になるというのは違うかもしれないが、それだけのために体が弱った高齢の入所者のための代理交付の手続きといったコストをかけなくてはいけないのか。なぜそこまでしてマイナカードを広めないといけないのか、全く理解ができません」