そのような状況下で、政府税調の答申レポートで以下のように記載されていたことが波紋を呼んでいる。
《給与所得控除によりマクロ的には給与収入総額の3割程度が控除されていますが、給与所得者の必要経費と指摘される支出は給与収入の約3%程度と試算されており、主要国との比較においても全体的に高い水準となっているなど、「勤務費用の概算控除」としては相当手厚い仕組みとなっています》
この内容から、会社員は税制上で優遇されていると、政府税調が認識していることが読み取れる。もし給与収入の3%まで給与所得控除が引き下げられれば、会社員の所得税への税負担が大幅に増加する。
【給与所得控除が見直された場合の所得税額(年収別)】
年収400万円の単身世帯:8万3000円(現状)→18万500円(3%になった場合)
年収700万円の単身世帯:29万2500円(現状)→61万500円(3%になった場合)
※所得控除は、年収400万円を110万円、年収700万円を160万円で試算
このように、給与所得控除の見直しは、必要経費や小規模企業共済などの節税手段が使えない会社員にとって大きな打撃となることが予想される。
なお、平成30年度の税制改正によって給与所得控除の一律10万円の引き下げが実施されているが、同時に基礎控除も10万円引き上げられている。このように給与所得控除が見直された場合に、基礎控除の引き上げがセットになる可能性もゼロではないが、会社員にとって死活問題にならないか、注視していく必要がある。
「骨太の方針」にも明記された退職所得課税制度の見直し
政府税調の答申レポートで注目を集めているのは、給与所得控除だけではない。会社員に支給される退職金については、以下のように記載されている。
《現行の課税の仕組みは、勤続年数が長いほど厚く支給される退職金の支給形態を反映したものとなっていますが、近年は、支給形態や労働市場における様々な動向に応じて、税制上も対応を検討する必要が生じてきています》
退職金を受け取る際は、勤続年数によって控除額が増える「退職所得控除」が適用される。現状の制度では、勤続20年目までは年間40万円、21年目以降は年間70万円ずつ控除額が増加する仕組みとなっている。このように勤続年数が長いことへの優遇措置が、転職や独立の機会を奪っているのではないか、という指摘だ。