2022年度(2022年4月~2023年3月)の運用実績は、2兆9536億円の黒字でした。振り返れば、2022年度は世界株式全体が低迷しており、意外な結果に感じます。GPIFの公表資料をみるとトータル収益は2兆9536億円ですが、インカムゲインが3兆7003億円とあります。つまり、去年の収益はインカムゲインによるものだったことが分かります。
GPIFは長期投資で運用していますので、リバランス以外では、資産を大きく売却することはありません。運用資産は2022年度末時点で200兆1328億円、運用開始した2001年度からの累積収益額は108兆3824億円ですから、確実に運用資産が増えていることが分かります。おそらく今後も増えていくでしょう。
そんな中で注目したいのは、インカムゲインの存在感です。2022年度のように株式が下落基調であっても、配当金で黒字化できています。また、累積の収益額108兆円のうち、47兆円がインカムゲインによるものです。昨今、日本企業は株主還元を意識して、配当額を増やす企業が増えていますので、今後もますますGPIFの配当収益は増えていくことが予想されます。
2023年4~6月期の成績は?
直近では、8月4日に2023年4~6月期の運用実績が発表されました。なんと18兆9834億円の黒字。これは四半期としての黒字額として過去最高だそうです。好調の要因は、日本株高と円安です。4~6月期は、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株を買い増したというニュースや、東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業にテコ入れするなど、日本株にとって追い風が吹いていました。この3ヶ月で日経平均株価は5000円以上も上昇していますので、好成績も納得です。
ただし、そのためポートフォリオ全体の日本株の割合が膨らんでおり、リバランスのために日本株を一部売却したとの観測もあります。事実、7月以降、日本株の上昇は一服し、足踏み状態です。運用額が大きいため、市場への影響も大きく、わたしたち個人投資家にとってもGPIFの動向は無視できません。短期的な赤字、黒字といった評価だけでなく、ポートフォリオの変化にも気を配りたいですね。