リタイア後の資産防衛戦略を考えると、物価高が続くなか、金利の低い銀行に預けているだけでは、現金の価値は目減りする一方だ。資産を“殖やす”選択肢を考えたいところだが、「投資」にはリスクがつきまとう。人生の残り時間が見えたリタイア後に大博打を打つのは現実的ではないだろう。
資産防衛には堅実に銀行預金を続けるべきか、多少のリスクを背負ってでも投資をすべきか。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が言う。
「結論から言うと、一方だけを選択した場合、どちらもお手上げ、つまり最後の10年でお金が尽きる可能性があります」(以下、「 」内同)
現在の物価高が今後も続くと考えると、購買力は低下する一方だ。医療費などがかさめば、「貯蓄の取り崩し速度が速まり、預金だけでは人生終盤で資金がショート、自宅の売却など生活のダウンサイジングを余儀なくされる」と深野氏は警告する。
一方、投資には元本割れのリスクがあり、資産が半減する可能性もある。
「必ず儲かる保証がないばかりか、再びリーマンショックのような危機があれば、預金よりも早い段階でお手上げ状態になる可能性もあります」
そこで深野氏が高齢者向けに推奨するのが「つみたて投資」だ。
「リタイア世代の投資は“いかにリスクを抑えるか”が重要。NISAなどを利用して、世界経済の成長率プラスαのリターンが見込める全世界株式に分散投資する投資信託に、『つみたて投資』をするのが得策です」
とはいえ、投資で減らした分を働いてリカバーする猶予はないため、「バランス」が重要だ。
「人により保有資産は違いますが、リタイア後は預金7割・投資3割のイメージだと考えます。毎月数万円ずつを投資に回すのがいいでしょう」
生活水準を不本意なまでに落とすことのないよう、攻めと守りのバランスが要となる。
※週刊ポスト2023年9月1日号