「老後に必要な金融資産は約2000万円」というショッキングな報告書を金融庁が発表したのは2年前の6月。以来、自らの貯蓄額に不安を抱く人が増え、そうした不安は還暦や定年を見据えた50代になるとより深まる。
別掲の『年齢別平均貯蓄額』の表を見てほしい。50才代の平均貯蓄額は「924万円」とある。が、その内訳を見てみると、「金融資産非保有(貯金ゼロ)」の人が41%いる。次いで、「100万円未満」の人が10.4%。つまり、50才代の51.4%の人の貯蓄額が100万円に満ちていないのだ。
そうした現状についてファイナンシャルプランナーのタケイ啓子さんに聞いた。
「平均値を含む貯蓄700万~1000万円未満の層はわずか5.6%。一方、1000万円以上の貯蓄がある層を合計すると20.2%。一部の高額資産保有者によって平均値が底上げされており、平均値と実態に大きな乖離のある状況といえます」
つまり、50才代の貯蓄額の平均は924万円ながら、その実態は、富裕層とそうでない層に二極化しているのだ。
表の右端に「中央値」という言葉があるが、これは何か?
「中央値とは、数値を小から大まで並べたときの真ん中の値で、この数字が“実態”に近いとされています。50才代の平均貯蓄額の中央値は30万円とありますが、これが現実に近い数字といえます」(タケイさん)
50才代で貯蓄額30万円。こうした数字を見ると、高額でなくても、地道にコツコツと計画的に貯めることが大切に思える。
「小さい暮らし」という選択
また、『50代女性単身者1か月の平均支出額』を見ると、首都圏に住む50代女性単身者の1か月の平均支出額は「17万1000円」となっている。ちなみに、50才代の貯蓄額の中央値は「30万円」なので、これくらいの手持ちがあれば、1か月の収入がゼロでも、ひと月以上は生活できる計算になる。とはいえ、手持ちが潤沢でなければ不安もあろう。前出・タケイさんはこうアドバイスする。
「50代になると老後の暮らしが現実味を帯びてきますが、1か月いくらあれば生きていけるのか体感してみることをおすすめします。
金額を算出して現実と向かい合うと、『少しでも貯金に回した方がいい』とか『これにお金をかけるのは控えよう』というように、具体的な対策を立てられるようになります。“小さい暮らし”を実現し、身軽になれば、不安もその分、小さくなります」