いつか訪れる自身の葬儀で残された家族に迷惑をかけたくないと考える人は多い。近年、当事者が生前「俺は費用のかからない形でいいよ」と家族に伝えることで、妻や子が家族葬などこぢんまりとした葬儀を選択する事例も増えている。だが、それが裏目に出ることもある。佐藤葬祭代表の佐藤信顕氏が語る。
「葬儀後になって親戚や知人が、『家族葬なんて供養が不十分だ』と、子や孫を責め立てるケースが多く見られます。故人に友人が多いと、『参列できなかったから、俺だけでも』と後日、弔問客が次から次へと自宅を訪れ、家族が疲弊してしまう場合もある」(以下「 」内同)
葬儀には死別感情を整理するうえで重要な意味がある。京都大のカール・ベッカー教授らの研究によると、2~8か月以内に家族を亡くした遺族にアンケートしたところ、満足のいく葬儀ができた人はそうでない人に比べて、“その後の人生で仕事の生産性や身体的・精神的健康が高かった”という結果が出ている。
葬儀は故人のためだけではなく、家族や親戚、友人らが気持ちに整理をつけるための場でもあるので、盛大にやるか質素にやるかは残された人たちの気持ちも考えて決めるべきだ。そういう認識で事前に準備を進めたい。
「まずは自身の交友関係などを喪主となる人に伝えておくことが大切です。そのうえで家族の側も故人の暮らしぶりや友人関係をきちんとヒアリングしてくれる葬儀社を選ぶのがよいでしょう。そういうところなら、遺族側の金銭面などの負担分を配慮してくれたうえで、適切な葬儀形式を提案してくれるはず。
さらにいえば一般葬のほうが香典収入がある分、家族葬よりも結果的に安く済むケースもあります。どうしても小規模にしたいなら、葬儀とは別にお別れ会を開いたり関係者に手紙を送るなど残された人への配慮を忘れないようにしましょう」
葬儀は自分の意思を伝えるだけではなく、周りの意見を聞くことだ。
※週刊ポスト2023年9月1日号