企業概要
エービーシー・マート(2670)は、「ABCマート」(エービーシーマート)を展開する靴小売チェーン。市場規模1兆3000億円と言われる国内シューマーケットでおよそ10%のトップシェアを誇る最大手企業です。
最近では、スポーツファッション専門店「ABC-MARTSPORTS」など靴に留まらない業態展開を進めています。2022年3月にはセブン&アイ・ホールディングスからオッシュマンズ・ジャパンを買収し、スポーツ・アウトドアファッション全般にビジネスを広げつつあります。
2023年2月期は国内外88店舗の新規出店を果たし、グループ全体の店舗数は1457店(国内1074店舗、海外383店舗)に。売上高は過去最高の2900億円を記録しました。コロナ禍にあった2021年2月期および2022年2月期は、コロナ前の水準を下回りましたが、コロナ収束とともに需要が回復し、さらにインバウンド需要も見込まれる事業環境となってきました。今期2024年2月期も、売上・利益ともに過去最高を更新する見通しです。
注目ポイント
同社最大の特徴は、「既に知名度のあるブランドの商標権を取得し、自社ブランドとするプライベートブランド戦略にあります。
プライベートブランド(PB)というと、イオングループの「トップバリュ」やセブン&アイホールディングスの「セブンプレミアム」などが思い浮かびますが、同社のPB戦略は、セブンプレミアムなどの「一から知名度を作っていく」PBとは種を別にします。
ブランドの商標権を取得するので、知名度を上げていく必要はありません。ブランドを引き継ぎ、そのイメージの下で企画開発、製造、販売するのです。元々のブランド力があるので新たなイメージ作りやプロモーションなどは必要ありません。
同社の場合、1994年に「VANS」の国内商標使用契約を締結、1995年には「HAWKINS」の商標権を取得。2012年には米国のブーツブランド「LaCrosse」を、2014年には「WHITE’S BOOTS」を買収し商標権を取得しました。
ブランドの商標権を取得して自社ブランド化するほか、レディース商品の「NUOVO Collection」、「ABCSelect」、「byA」など、一から自社開発したPBもあります。このほか、「saucony」などのライセンス契約、また「NIKE(ナイキ)」をはじめとした有名ブランドとの共同開発の下で限定品を発売するなどしています。
こうした商品群は、値下げ競争に巻き込まれにくく、また企画・製造・販売までを一貫して行うSPA方式によって中間マージンがカットされるため利益率が高くなります。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。