強豪校では野球部を強化指定クラブにして優遇する学校もあるが、慶応の場合は数ある部活動のひとつでしかない。
「野球部だけに資金を投下するわけにはいかないので、結局、OBの自助努力と言いますか、倶楽部でお金を集めないと、いろんなものが進んでいかないんです」(森林)
清原勝児と同様、幼稚舎(小学校)から慶応で過ごしてきたのが三塁手の福井直睦。彼もまた日吉倶楽部のサポートに感謝していた。
「ボールの寄付をはじめ、ネットが壊れたらすぐにOBの方が業者さんに修繕をお願いしてくださいます。今年のセンバツのあとには、老朽化したウエイト場を取り壊して、3階が部室、2階がウエイト場、1階が審判室というクラブハウスを日吉倶楽部の方々が中心となって建ててくださいました」
卒業生がクラブハウスを建てるとは、ライバル校も羨む―いや、どの学校にも真似できないバックアップ体制だろう。
野球用具の“高騰化”問題
慶応の野球部には大学生コーチが常駐するのが伝統だ。マネージャーの大鳥は、こうした大学生コーチの存在も大きいと語る。
「大学の体育研究所が開発したという身体の筋肉量などを調べる機器がある。体内の筋力量、脂肪量などを測定するんですが、その結果を基に大学生コーチと研究所の方が話し合って、ウエイトトレーニングなどの時期を決めていきます」
中学時代の実績では横浜や仙台育英といったライバルに見劣りするところはある。だが、彼らは知識や大学とのつながりを武器にして、強豪私立に打ち勝った。清原勝児は大会期間中、筆者の単独インタビューにこう答えた。
「夢はプロ野球選手です」