6月、全国に先駆けて誤表示問題が発覚した千葉市では、市民による“マイナ不信”が深刻化している。5月は5件しかなかったマイナカードの自主返納件数が、6月は53件、7月は34件と急増した。
「理由として『制度を信用できない』『不安がある』といったものがありました。相談事例のなかにはマイナ保険証での紐付け情報に誤りがないかを心配する声もありました」(千葉市区政推進課)
厚労省は「調査中」
発覚している事例は氷山の一角にすぎない。『マイナ保険証の罠』(文藝春秋刊)の著者で経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。
「高齢者の本人負担は所得に応じているため、現役並みなら3割負担、住民税非課税世帯なら1割といった線引きのどこに位置付けられるかは毎年変わるし、制度も複雑です。高齢者自身が細かい金額にまで意識を働かせるのは難しく、窓口で言われるがまま支払っているのが実状でしょう。誤請求が発覚した事例では医療機関側が気づいたケースもありますが、すべてを見つけるのは無理がある。誤った金額を支払っている人の数は、もっと多いと考えられます」
厄介なのは、原因がはっきりと特定できていないことだ。前述の千葉市の例では、市職員が加入者情報を打ち間違えたことが理由だった。
だが、厚労省に取材すると「現在、原因を調査中」と歯切れが悪い。
「負担割合の相違の背景には、事務処理関係による入力ミスもあれば、診療報酬請求を行なうシステムに問題があるなど、いろんなパターンがあるであろうと思っています。今後、対策を検討していく方針です」(保険局高齢者医療課)