猛暑日が続く中、オフィス出社が義務の企業で、酷暑を理由にリモートワークを希望することは可能なのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
会社はコロナが5類に移行した時点でリモートワークを廃止し、通勤出社を義務付けています。辛いのは酷暑の中、会社に向かうまでの1時間半で、死にそうになります。それこそコロナ禍と同じ恐ろしさ。それなのに、猛暑日に出社を促す会社は間違っていると思いますし、改善を求めてもよいですよね。
【回答】
あなたの不満は、職場環境ではなく、通勤にあるようです。『労働安全衛生法』は事業者に対し、作業環境を快適な状態に維持管理する措置を講じる努力義務を課しており、これに基づいて維持すべき職場の温度などを定めた指針が出されています。例えば、空調を備えた事務所では、18度から28度とされていますが、同法は通勤途中の環境については何も触れていません。
確かに、今年は災害級といわれる猛暑が続いています。通勤を強いるより、リモートワークのほうが効率的かもしれません。しかしながら、会社はその廃止が業務上必要だと判断したと思われ、この点はやむを得ないことです。
ところで、災害といえば大地震や台風などですが、こうした状況が発生すると、従業員の安全のために遅刻や早退、場合によっては休業を命じることがあります。
これは会社が労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ、労働することができるよう必要な配慮をする義務があるため(労働契約法5条)。酷暑での屋外労働では、作業時間の短縮や休憩の取り方などで配慮がされていますが、室内作業の温度については前記のとおりで、酷暑の影響はないでしょう。