老後の“三大不安”には、「病気」「貧困」「孤独」があるとされる。なかでも「貧困」、つまりお金に対する不安を抱えている高齢者は多い。本誌・女性セブンで「いつも心にさざ波を!」を連載中のオバ記者ことライターの野原広子さん(66才)もそのひとりだ。そんな悩みを経済コラムニストの大江英樹さんに吐き出す。【前後編の前編。後編を読む】
お金に執着するほど不安になる
野原広子さん(以下。野原):若い頃は江戸っ子でもないのに、「宵越しの銭は持たない」なんて豪胆なことを言ってね、貯金もそこそこに、気ままなひとり暮らしを続けてきたけど、66才になってそうも言ってられなくなったんです。なんせ私の貯金残高は30万円よ(笑い)。
大江英樹さん(以下、大江):その気持ち、ぼくもわからないわけではありません。以前、知り合いの噺家さんに聞いた話ですが、ご長寿双子姉妹の「きんさん・ぎんさん」にお会いしたことがあって、100才を超えていたお二人に、彼はこう聞いたそうです。「稼いだお金はどうするんですか?」って。すると、「半分は寄付して、半分は貯金します。何しろ老後が心配だから」ですって(笑い)。
野原:100才姉妹の老後って何よ(笑い)。
大江:そうなんです。しゃれで言ったのかもしれませんけどね。でも、お二人のように稼いでいる人でも、何才でも、老後資金に対する不安は尽きないんですよね。
野原:そう、お金は何より大事と思うこともあります。たとえば貧しい家に生まれたらできないことも、裕福な家庭に生まれたらできる、っていうことも多いでしょ。
大江:うーん、“何より大事”っていうのはどうかな。お金に対する“解釈”がその人の人生を左右することはあるかもしれないけれど、お金の“有無”が人生の決め手になるとは言えないんじゃないかな。
野原:お金に対する解釈って?
大江:よく「お金があれば何でもできる」と思っている人がいますが、ぼくはそんなことはないと思う。なぜならお金は、モノやサービスを提供してくれた人に感謝のしるしとして渡すものだから。つまり、感謝を示す記号のようなもの、というのがぼくの解釈ですね。