厚生労働省が今年7月に発表した『国民生活基礎調査』の最新値によると、2021年の日本の相対的貧困率は15.4%にのぼる。相対的貧困率とは、等価可処分所得が中央値の半分未満世帯員の割合をさす。つまり日本では6人に1人が、貧困状態にあるということだ。
本当に生活が困窮すれば生活保護を躊躇なく申請するべきだが、それ以外にも頼れる制度は数多くある。特定非営利活動法人ほっとプラス理事で『下流老人』などの著書がある藤田孝典さんが言う。
「生活保護法とは別に、『生活困窮者自立支援法』という新しい法律が2015年に施行され、使える制度は増えています。例えば、急な出費が必要になったけれどそのお金がないという人には『生活福祉資金貸付制度』という、原則無利子でお金が借りられる制度がある。病気やけがの場合は、各都道府県に『無料低額診療施設』があり、低所得者は医療費や薬代がタダになったり、低負担で受診できます」
どんな制度を利用できるかわからなくとも、生活に困ったら、がまんしたり遠慮したりせずに、自治体の窓口に相談することだ。『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち 深まる孤立と貧困』(光文社新書)などの著者でノンフィクションライターの飯島裕子さんが言う。
「生活保護を受けることを躊躇する必要はありません。生活保護を受けられない場合でも相談に行けば、ほかに使える制度や支援を紹介してもらえる可能性もあります。役所に行くのはハードルが高いと感じるなら、生活困窮等の相談に乗っているNPOなどを活用してほしい。生活保護を申請する際に役所に同行してくれることもあります」
「即日入居可!生活保護サポート!」の落とし穴
一方で、生活に困窮した高齢者を騙す、「貧困ビジネス」には要注意だ。仕事も家も失った40代の男性が「いますぐ住める部屋を用意する」という民間業者を頼ったところ、身分証やキャッシュカードも取り上げられたうえ、不必要な支援サービス料をとられたケースもある。生活保護に関する知識を、YouTubeやSNSなどでわかりやすく発信することで「生活保護おじさん」として知られる、つくろい東京ファンド新規事業部長の佐々木大志郎さんが言う。
「『物件に即日入居可!生活保護サポート!携帯電話も貸し出し!』といった“甘い”文言を謳う団体は、貧困ビジネスの可能性が高いです。
ひっかかると、内見なしの入居で転居もままならない、さまざまな名目で生活費を差し引かれる、当初約束されていた生活支援がまったくないなどの場合もあります。充分な面談や相談もなしに“すぐ”“即日”入居サポートを約束する言葉には、原則、“裏”があると思っていた方がいい」
別掲の表は、生活に困ったら「もらえるお金」「つかえる制度」をまとめたものだ。人生100年時代、みじめで悲しい最期にならないよう、明日はわが身、と思って備えたい。
※女性セブン2023年9月14日号