日本が経済的に豊かな国だと思われていたのも、過去の話。今となっては貧困がすぐ足元にまで迫っている。厚生労働省が今年7月に発表した『国民生活基礎調査』の最新値によると、2021年の日本の相対的貧困率は15.4%にのぼる。相対的貧困率とは、等価可処分所得が中央値の半分未満世帯員の割合をさす。つまり日本では6人に1人が、貧困状態にあるということだ。
貧しい老後を送らなくてすむように、私たちはどうすればよいのか。まず心しなければならないのは、老後をしっかりと見据えて、長期的な視点で貯金や投資、個人年金の増額などを行い、老後資金を確保しておくことだ。特定非営利活動法人ほっとプラス理事で『下流老人』などの著書がある藤田孝典さんが言う。
「本来なら国がきちんとした年金制度を整えるべきですが、余裕があるならNISAやiDeCoのような老後の資産形成をしておくこと。特にいまの現役世代は、それがないと人生100年時代を生きるのは難しい。あとは手に職をつけておくことも大切です。有資格者の貧困率が低いことはデータでも明らかなので、若いうちに何らかの資格を取ってスキルを身につけておいてほしい」
また、頼れる先を増やすために、周囲の人たちと親しい関係を築くことも必要だ。
「家族や友人など、とにかく人を大事にする。人とのつながりが失われることをわれわれは“関係性の貧困”と呼んでいますが、関係性の貧困が解消されれば、人づてでいろいろな情報が入ってきます。『こういう制度があるよ』とか『あそこのNPOに行ってみるといいよ』など知識が増える。
われわれのNPOにも、友達から紹介されました、民生委員から紹介されました、というおじいちゃん、おばあちゃんは多い。『女性セブン』などの雑誌も含めて、いろいろな情報に目を通しておくことも必要です」(藤田さん)
生活保護というセーフティーネット
そして、貧困状態に陥ったら、生活保護というセーフティーネットを活用したい。日本テレビのディレクター時代から貧困問題に携わってきた上智大学文学部新聞学科教授の水島宏明さんが指摘する。
「日本では長く“生活保護を受けるのは恥ずかしい”というイメージや偏見があり、行政もそういう見方を是正しようとしてこなかった。生活保護のハードルが高いことが、最大の問題です」