タワーマンションの高層階は実勢価格に対して相続税評価額を低く抑えられる。それを相続税対策に利用する手法が「タワマン節税」だ。岡野相続税理士法人代表税理士の岡野雄志氏が指摘する。
「マンションの相続税評価額は、土地分は敷地面積を部屋の戸数で分割して算出するため低層と高層で変わりがないし、超高層で戸数が多いほど割安になります。建物分も面積が同じなら何階でも評価額は変わりませんが、実際の売買時の市場価格は高層階の部屋のほうが高い。つまり、高層階ほど実勢価格の割に相続税評価額が低くなり相続税を安く抑えられるのです。
しかし、富裕層が優遇されるといった不公平感から2024年1月に是正される予定です」(以下、「」内は岡野氏)
国税庁は新たなルールを発表し、現在全国のタワーマンションの高層階では平均して実勢価格の4割ほどに相続税評価額が抑えられているところ、新たな算定ルールでは6割以上に引き上げられる見通しだという。
例えば1億円のタワマンを子2人に相続するケースで評価額が4000万円から6000万円に上がると、相続税はゼロから180万円に増える。
タワマン節税の課税強化が進むわけだが、対処法はあるのか。
「すでにタワマンを購入している人は、今年のうちに『駆け込み贈与』をするという手もあります。相続税評価額を低く抑えられる今年のうちに2500万円まで控除される『相続時精算課税制度』を利用して子などに生前贈与しておくと、場合により相続を待つより安く済むケースもあります」
相続時精算課税を利用すると相続の発生時に生前贈与された資産を相続財産に加えて計算することになるが、相続税評価額は贈与時点のもので計算するので何もせずに来年の改定を迎えるより相続税額を安く抑えられる可能性がある。
ただし、「今後、贈与時点での相続税評価額で計算するというルールのほうも変更される可能性があるかもしれません」と岡野氏。今後の動向に注意が必要だ。
※週刊ポスト2023年9月15・22日号