不動産バブル崩壊・若年失業率の増加など問題が山積する中国。そうした国家の非常事態に中国共産党の習近平・国家主席も有効な対策を打てずにいるようだ。かねてより経営コンサルタントの大前研一氏は、習近平氏による独裁体制について警鐘を鳴らしてきた。今の中国にはどんな問題があるのか、大前氏が分析する。
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約49兆円の負債を抱えている中国の不動産大手・恒大集団が、ついにアメリカで破産法の適用を申請した。恒大集団は「正常な債務再編手続きの一環」と説明しているが、この会社は中国政府が裏で支えているから存続しているだけで、事実上すでに破綻している。
他の不動産大手も苦境に陥っている。碧桂園は今年上半期の純損益が約1兆円の赤字になると発表し、28兆円ものデフォルト(債務不履行)が危惧されている。遠洋集団も今年上半期の純損益が約4000億円の赤字になると発表した。中国の不動産市場は悪化の一途をたどっているのだ。
不動産バブルが崩壊すれば、かつての日本やアメリカなどのように経済の長期低迷は避けられない。しかも、中国の不動産バブルの規模は日本やアメリカとはケタ違いで1000兆円にも及ぶと推計されているので、崩壊が始まれば、そのダメージは計り知れない。
不動産バブル崩壊とともに深刻なのが若者の高失業率だ。16~24歳の若者失業率は6月に21.3%となり、記録がある2018年以降で最悪を更新。7月からデータの公表を取りやめた。若者失業率は46.5%に達したという試算もある。
中国の若者の間では、厳しい競争社会を忌避し、住宅などの高額消費や結婚・出産を諦める「寝そべり主義」「寝そべり族」というライフスタイルが広がっているが、最近は大学を卒業したばかりの若者たちが屋外で死体のように横たわる「ゾンビスタイル」の写真を投稿して話題になった。大学を出ても就職先が見つからず、すぐさま路頭に迷ってしまうからである。
不満が鬱積している若者に対し、中国共産党の機関紙『人民日報』は都市部から地方や辺境に移住することを勧める記事を掲載した。まるで毛沢東が文化大革命期に失業問題の解決などを目的に都市部の若者を地方の農村に追放した「下放」「上山下郷」政策のようだ。
最近の福島第一原発処理水の海洋放出に対する嫌がらせ電話などは、そうした国民の不満の捌け口を日本に向けるためだろう。