消費者数減→廃業増→商圏縮小という悪循環
例えば、JRの赤字ローカル線である。仮に路線バスに転じても利用者が増えなければ根本解決とはならない。事実、代替バス路線までもが廃止となった事例が登場している。
人口減少による経営へのダメージは、税金投入などの支援を見込むことが難しい民間企業や個人経営商店にとってはより深刻である。
どの業種もビジネスとして立地し続けるのに最低限必要となる商圏規模(消費者数)というものがある。その業種にとってのボーダーラインを下回る消費者数となれば採算をとることが困難となり、撤退や倒産・廃業が始まる。すでに人口が少ない県などではスーパーマーケットやガソリン給油所の撤退、廃業が進み、遠方まで買いに行かざるを得なくなった事例は珍しくない。
日常生活に不可欠な店舗の撤退が始まると、ますます商圏が縮むスピードは速まる。地域住民の側に立って考えれば、生活に必要なサービスや商品を簡単に手に入れることができなくなるということだ。近隣の便利な場所などに引っ越す人が出てくるのが自然だ。
不便になるだけではない。生活に不可欠な商品やサービスを手に入れるためのコストが増大する。
水道料金の大幅値上げでも分かるように、撤退や廃業しない事業者の多くは採算割れとならないよう利用者への上乗せ負担を求める傾向を強めるだろう。マーケットが縮むと物資を運ぶ運送業も採算がとりづらくなる。そうでなくともドライバーの確保は年々困難になると予想されている。
人口が少ない地域ほど生活費が高くつく
人口減少社会というのは、人口密度の低いエリアの生活費がこれまで以上に高くつくようになる社会でもある。
商圏が小さい地域ほどサービスや商品が割高になり易い傾向については、先述したEY新日本有限責任監査法人と水の安全保障戦略機構事務局の「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2021年版)」も指摘している。
2043年度には全国の水道料金格差は24.9倍に広がるというのだ。マンションが林立する人口密集地とは違い、住居が点在する過疎地域では水道管の距離を長くせざるを得ず、それを維持管理するのに見合う収入は得づらいことが背景にあるわけだが、給水人口が少ない小規模事業体や人口密度の低い事業体ほど料金の値上げ率は高くなる傾向となり、50%以上の値上げが求められるのは給水人口20万人未満の事業体に集中すると試算している。
こうして生活費が高くつくようなことになれば、年金収入を主柱とする高齢者などの暮らし向きは大変となる。マイカーなどで移動することが困難になる人も増える見通しだ。過疎地域ほど住民の高齢化率は高く、社会機能が麻痺しかねない。
こうした事態を招かないよう、政府が打ち出したのが地域生活圏構想だ。新たな国土形成計画に盛り込まれた。