二つ目は、中国は外貨準備におけるドルの比率を下げ、通貨の分散化を図ろうとしている。2016年第2四半期における日本の国際収支状況で中国との金融収支を見ると、5兆8989億円の流入で、前年同期と比べると4.1倍に増えている(データは日本財務省)。中国からの資金流出入は2015年第1四半期から流入に転換、金額は四半期ごとに増えている。
中国では個人、企業による海外への金融投資には厳しい制限が課せられているため、その多くが中国人民銀行による日本国債への投資とみられる。第3四半期の結果は出ていないが、流入額がさらに増えている可能性がある。つまり、戦略的に米国債の保有を減らし、日本国債を増やしている可能性がある。
10月末の米国債の内、海外保有分は27.5%ある(データはBUREAU OF THE FISCAL SERVICE)。中国の国債保有額は日本よりもわずかに少ないとはいえ、1兆1157億ドルを所有している。トランプ新大統領が経済面で中国に対して厳しい態度で臨もうにも、中国はアメリカ国債を売り浴びせるといった選択肢があることを意識せざるを得ない。
もし、中国がアメリカ国債を売り、国債価格が暴落するようなことになると、リーマン・ショック以上の危機となりかねない。また、アメリカが中国製品に対する輸入関税を45%に引き上げたとすると、中国側はアメリカへの輸出品に同じだけの関税をかける可能性がある。