アメリカにおいて最大の輸入先は中国である。いろいろな契約があり、調達先の変更には時間とコストがかかる。一般に、価格の調整よりも数量調整は遅れるため、アメリカの輸入物価は瞬間的に急騰するだろう。それは国内物価の急騰、金利の急騰へと連鎖し、金融危機を招きかねない。トランプ新政権が実際に取り得る対中強硬策は限られよう。
日本では、日本銀行が国債購入を進めているため、国債の流通分が少なくなって価格形成が不安定になりつつある。中国が日本国債の購入を増やしているようだが、今後、中国による売買が日本の国債価格に大きく影響を与えるようになる可能性がある。対中関係が悪化した場合、金融面で大きなリスクが生まれつつあることに日本はもっと注意を払う必要があるだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。