厚生年金に加入したら年金がいくら増えるか
【質問3】壁以上に働いて厚生年金に加入した場合、どのくらい年金が増えるか知っていますか?
社会保険上の扶養を外れることは、厚生年金や健康保険(介護保険も)に会社を通じて加入することを意味します。ですので、加入した期間の年収と期間によって、将来もらえる厚生年金は増えますし、病気やケガで働けなくなった場合は、通算1年半まで給料の一部を傷病手当金として受け取れます。出産すれば、産休中の給料の一部を出産手当金として受け取れます。もし障害を負った場合は、国民年金のみ加入時より障害年金の保障が手厚くなる可能性があります。
それでは、具体的にどのくらい年金が増えるのかみてみましょう。公的年金は、亡くなるまで受け取れる終身年金ですので、老後資金が心配な方ほど安心感が増すのではないでしょうか。
たとえば現在年収105万円で社会保険上の扶養に入っている45歳の方が、働く時間を増やして年収150万円で60歳まで働き続けた場合、月9600円の年金額が一生増えます。年収150万円となった場合の令和5年(20023年)度現在の厚生年金保険料は約1万1500円(被保険者分)。15年間で支払う保険料は、厚生年金分が約207万円ですので、9600円で割ると、約18年受け取るとほぼ同じ金額に。年金を受け取り始める65歳時点の平均余命は、男性19.4年、女性24.3年ですので、平均で考えると損にはならない計算です。ちなみに扶養を外れると、厚生年金保険料の他に健康保険料もかかり、このケースですと介護保険料を含めて約7450円となりますが、これは健康保険や介護保険の保障に充てられています。
この金額を見て、少しでも魅力的に感じた人は、壁を超えて働いてみるのも良いのではないでしょうか。
以上、数字で考える3つの質問を挙げました。これらを計算した上で、もっと大切なのは、ご自身がこれからどんな人生を歩んでいきたいかということです。若かった頃に実はやりたかったこと、ありませんか? 子育て中の方は、子どもの世話に手がかからなくなったあとの自分を想像してみましょう。目先の手取りや損得でなく、長い目でみてなりたい自分に近づける方法を選ぶのが正解です。扶養に入ること自体は権利ですので、ダメなことではありません。状況や価値観に合わせて、働き方を考えていきましょう。
【プロフィール】
鈴木さや子(すずき・さやこ)/株式会社ライフヴェーラ代表。CFP認定者、1級FP技能士、DCプランナー1級・キャリアコンサルタント(国家資格)。保険等商品を一切販売しないFPとして活動。専門は教育費・保険・マネー&キャリア教育、確定拠出年金。企業講演の他、小・中学校や自治体等の講演やワークショップなど、保護者や親子向けイベントも行う。大学生・高校生の母。著書に『資産形成の超正解100』(朝日新聞出版)がある。