『夜のヒットスタジオ』の枠内で生中継
もう打者の成績が凄まじかった。投手に関しては、勝ち頭のゲイルが13勝とそこそこで、防御率も4.35と凡庸なもの。目立った投手はダブルストッパーの山本和行と中西清起ぐらい。そんな投手陣の一方で、打者が打ちまくった。開幕直後の「バックスクリーン3連発」が象徴的ではありますが、以下、主な打者のシーズン成績です。
真弓明信:打率.322、34本塁打、84打点
ランディ・バース:打率.350、54本塁打、134打点
掛布雅之:打率.300、40本塁打、108打点
岡田彰布:打率.342、35本塁打、101打点
これは「新ダイナマイト打線」と呼ばれましたが、終盤に3点差で負けていても「この中の誰かが打つだろう」という安心感がありました。下位打線も佐野仙好・平田勝男・木戸克彦という好打者がおり、代打では打率.327の永尾泰憲と、大洋で1982年に打率.351で首位打者を取った長崎啓二(現・慶一)が打率.283、6本塁打と活躍。弘田澄男、北村照文、吉竹春樹も信頼できる控えでした。
6連敗したかと思えば6連勝するなどよく分からない貯金の仕方をするチームでしたが、連日盛り上がりを見せる甲子園球場。真弓の打席ではミッキーマウスのテーマソングに合わせてファンが横向きになり、両手のメガホンを交互に上げ下げするダンスをしながら横に移動、ラッキーセブンにはジェット風船が舞う華やかな応援スタイルは観ていて本当に楽しかったです。当時人気のプロレスラー・タイガーマスクのマスクを装着して応援するファンもいた。こうした黄色一色の甲子園を「イエローフィーバー」と書く雑誌もありましたがそれって「黄熱病」だろ!
一方で、「本当にワシらのチームは勝てるんか?」と20年間優勝から見放されたファンのオッサン達は半信半疑で「阪神半疑やガハハハ」などと語っている様子もテレビで見ました。
そして、10月16日、神宮球場でのヤクルト戦はマジック1で迎えました。当時、東京の民放テレビで見られた野球中継は巨人戦がほとんどで、元々の放送予定にこの試合は入っていませんでした。それがなんと、フジテレビの『夜のヒットスタジオ』の枠内で、阪神戦の終盤を生中継したのです。番組には近藤真彦やチェッカーズなど名だたるスターが出演していましたが、メイン画面には阪神戦の中継。右下のワイプに狂喜乱舞するマッチの姿が!という凄まじい演出でした。試合は延長線に突入し、10回裏を中西が抑え、5-5の引き分けで優勝。