あんなに上がっていたのに
銀行に預けているだけでは増えないからと、株式投資に注目する人も増えている。だが、株にも当然リスクがある。D氏は退職金で株を始め、手痛い敗北を喫したという。
「投資歴の長い友人から、富士通とパナソニックHDの半導体設計開発事業を統合した『ソシオネクスト』の株が有望という話を聞きました。今年1月に7000円だった株価が6月初めには2万円に迫る勢いで、私も思い切って同社株に200万円を投じました。『年内に株価が3万円になれば、半年足らずで100万円儲かる』と踏んだのですが……」
だが、投資から1か月も経たない7月5日、ソシオネクストの大株主だった富士通やパナソニックHDなどが同社株の売却を発表。株価はストップ安となった後も下落が止まらず、「7月25日に損切りで全株を売却。1か月あまりで50万円の損失を出してしまった。あまりに安直でした」とD氏は後悔しきりだ。
ファイナンシャルプランナー・森田悦子氏の話。
「業績が伸びている企業の株に投資しても、必ず儲かるわけではありません。短期的には悪い材料がなくても、外部環境や市場全体の方向性で株価が大きく動くなど、予期せぬ株価下落に見舞われることもある。こまめに情報をチェックし、いざという時すぐに撤退の判断ができなければ、成功は難しい面があります」
※週刊ポスト2023年9月29日号