お金持ちになるべく資産運用に取り組む場合、どのような金融商品に投資するのが正解なのか。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)や、FX(外国為替証拠金取引)などで、大儲けしたという人の話を聞くこともあるが、もちろん誰もがそれらで成功しているわけではない。作家・橘玲氏は最新刊『シンプルで合理的な人生設計』で、「金融資本の成功法則」を具体的に解説している。どうすればお金持ちになる道筋を合理的に設計できるのか。橘氏がアドバイスする。
* * *
どうすればお金を増やせるかは、足し算と引き算、掛け算だけのわずか1行の数式で表わすことができます。
【(収入-支出)+(資産×運用利回り)】
この「お金持ちの方程式」からわかるのは、富をつくる方法はたった3つしかないことです。
【1】収入を増やす。
【2】支出を減らす。
【3】運用利回りを上げる。
まずは人的資本を大きくしてより多くの収入を得られるようにし、節約によって金融資本を増やし、それを長期にわたって効率的に運用するのです。
運用利回りを上げるには、どのような金融商品の選択が合理的なのでしょうか。これは、【A】コスパ、【B】リスパ、【C】タイパの最適化として考えることができます。
【A】コスパは「コストパフォーマンス」の略で、同じコストであればもっともパフォーマンスのいい金融商品を選択することです。これは誰でも知っているでしょう。
【B】リスパは私の造語で、「リスクパフォーマンス」の略です。同じパフォーマンスであれば、もっともリスクの小さな金融商品を選択することで、投資を考えるには大事な視点です。
【C】タイパは、同じパフォーマンスであれば、投資に必要な時間資源がもっとも少ない金融商品を選択することです。タイパという言葉は広く知られるようになりましたが、資産運用と関連づけて論じられることはあまりありません。時間がますます貴重な資源となっている現代社会では、人生のすべての場面でタイパを意識しなければならなくなっています。もちろん、投資も例外ではありません。
この3つの条件を最適化しようとすると、ほとんどのひとにとって、投資すべき金融商品はひとつに決まります。それが、世界の株式市場に分散投資する「株式インデックスファンド」の積み立てです。
金融市場についてはこれまで徹底的に研究され、1970年代にファイナンス理論として完成しました。その結論は、「長期にわたって株式市場の成長に賭けるのがもっとも成功確率の高い投資法」です。これは半世紀たった現在でも反証されていません。