老後資金の不安を解消する意味で「投資」は有力な選択肢のひとつだ。しかし、人気の「NISA(少額投資非課税制度)」にも落とし穴がある。
株式投資をする際、一般的な課税口座(特定口座・一般口座)では、配当金や売却益に対して約20%の税金がかかるが、NISA口座は非課税。だが、NISA口座内で損失が生じた場合はNISA以外の口座との損益通算(損失と利益を相殺すること)ができない。
10年ほど前に株式投資を始めたE氏は、儲けが非課税になるメリットを活かそうとNISAを始めたが、それが“仇”になったという。
「今さらですが、今年になってからNISAもやっておこうと考え、4月20日に楽天グループ株を株価680円で1000株(68万円)、NISA口座で購入しました」
株価は一時、740円台まで値上がりしたが、5月16日に楽天グループが経営悪化のテコ入れ策として最大約3300億円もの大規模な公募増資を発表。それにより、株数が大幅に増加して価値が希薄化するのを嫌った売りが相次ぎ、株価は急落した。
「その後も値下がりは止まらず、6月21日にはついに500円を割り込んだので、やむなく売却。損失は20万円でした。
一方、他の課税口座での取引は利益が出ているので、NISA口座の損失と相殺して税額を減らそうと思ったら、それはできないとそこで気が付いた。NISAのデメリットを知らず、丸ごと損になりました」(E氏)
2024年からは「新NISA」が登場し、現行の「一般NISA」と「つみたてNISA」が一本化され、投資枠も拡充される。いいことずくめのように思えるが、仕組みをしっかり理解したうえで利用すべきだろう。
※週刊ポスト2023年9月29日号