先日、ホノルル空港での入国審査で、観光目的の日本人女性が別室に連れていかれ、警察から取り調べを受けたうえで、入国拒否されたという報道が注目を集めた。ANN(テレビ朝日系)のニュースによると、昨今は、日本人を含めた給料の低いアジア人女性がお金を稼ぐために売春目的で渡米するケースが増えているといい、アメリカ入国時の水際対策も厳しくなっているのだという。このニュースでインタビューに答えていた女性は、職業が「インフルエンサー」と紹介されていたが、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、この点が大変気になったという。いったいどういうことか、中川氏が解説する。
* * *
彼女は洋服を多数持っていた理由はインスタ等にアップする撮影のため、と警察に説明。売春目的ではないとANNのニュースで語っていました。このニュースについては「そんな疑いを持たれるとは、日本の国力も落ちたものだ。かつてフィリピンから日本に水商売のため来た女性たち(“ジャパゆきさん”と呼ばれていた)と同じ扱いになっているんだな」という感想をまずは抱きました。
しかし、それと同時に自分が関心を持ったのが、ニュースで彼女が「インフルエンサー 大阪市の女性(32)」と紹介されていたことです。実際、警察とのやり取りで職業を聞かれ「インフルエンサーです」と答えたと言います。YouTuberが職業になったのは分かるのですが、インフルエンサーも今や職業なのか……という驚きがありました。
私は広告関係の仕事もしているため、もちろん「インフルエンサーマーケティング」が頻繁に行われていることを知っていますが、自分から「インフルエンサーです」と大々的に名乗る人がいることに驚いたのです。私のイメージだと、カリスマ店員やモデルや実績ある社長や人気YouTuberという本職がある人を、“世間が”インフルエンサー扱いをするものだと思っていたのです。
しかし彼女は自らインフルエンサーという職業だと語っています。確かにSNSのフォロワーが多くその人に商品を渡せば多くの人が見て買ってくれるからインフルエンサーだ、というのは理解できます。あくまでも違和感は「自分からソレを言うか?」ということです。
人気の漫才師や俳優が職業を聞かれ「有名人です」と冗談で答えるのはわかります。でも大真面目に「インフルエンサーです!キリッ」みたいなことができる人がこの世には存在するんだ……という感慨がありました。だいたい、大手商社マンや外資系金融機関サラリーマンは「エリート」と呼ばれがちですが、自分から「エリートです」とは言わないのでは。「会社員です」と言うことが多いです。