受注者側も発注者側も当面は「様子見」か
反対の声もやまないなか、10月にスタートするインボイス制度。その影響について、小林さんは「インボイス制度の仕組みが浸透していないということもあって、受注者側も発注者側も、当面は『とりあえず様子見』ではないか」と見ている。
「下請法や独占禁止法などによって、個人事業主やフリーランスは保護されていますから、免税事業者への報酬を強制的に減額したり、取引をいきなり打ち切ったりということは本来できません。それに、2029年9月まではインボイス制度の影響を軽減する経過措置期間がありますので、いきなり大きな影響が出ることはないと思います」(小林さん・以下同)
「インボイスのスタートで大混乱!」ということはなさそうだが、それでも、何も変わらないということはないだろう。“当面”起こりうる影響を小林さんに予測してもらった。
課税事業者になっても仕事は増えない?
課税事業者となれば、「変わらず仕事がもらえる」、なんなら「仕事が増えるかも」といった期待をして、インボイス発行事業者の登録をした人もいるだろう。これについては、「思ったほどでもなかった」ということもありそうだ。
「発注者にしてみれば、登録事業者と取引すれば確かに損はありません。しかし個人の場合、インボイス制度が始まった後も引き続き免税事業者を続ける人が多数で、課税事業者は少数派なわけです。発注者は消費税負担が増えたとしても選択肢として免税事業者に依頼するしかありません。向こう3年間は経過措置の控除額も大きく、負担も少ないのでなおさらでしょう」
また、「課税事業者となったとしても、フリーランスのリソースには限りがありますから、仮に依頼が増えたとしても、手が回らずに受注できないというケースもあるのではないでしょうか。その結果、免税事業者のところにも仕事が回ってくる可能性はあります」と小林さん。
インボイス登録のメリットの享受も、そう単純なものではなさそうだ。
資金力のない発注者側は大ダメージ
インボイス制度については、受注者側のフリーランスや個人事業主への影響が指摘されるが、小林さんは「実際のところ、もっとも大きなダメージを受けるのは発注者側の零細事業者ではないか」と指摘する。
「先ほど申し上げたように、フリーランスや個人事業主はまだまだ登録する人が少ない状況ですから、発注側もその状況を飲まざるを得ません。下請法があり無茶な報酬の減額はできず、それでいて厳しい売上の中で消費税の負担を負っていかなくてはいけない。資金力のない小規模事業者は本当に大変だと思います。消費税の免税制度というのは、免税事業者だけでなく発注側にとっても助かる仕組みだったのです」