経過措置期間での環境の変化
2023年10月1日からインボイス制度はスタートするが、「激変緩和の観点」からいくつかの経過措置が設けられている。たとえば、発注側が支払う免税事業者からの消費税を一定割合控除する「仕入税額控除」が6年間は認められる。このうち前半の3年間は控除割合が高くなっているため、「大きな変化は3年後以降ではないか」というのが小林さんの予想だ。
「3年たつとインボイスの仕組みは理解されるでしょうし、2026年10月には免税事業者との取引に関する控除が80%から50%になります。負担額が大きくなるこのタイミングで、『やっぱり免税事業者との取引は見直そう』という会社が増える可能性があります。免税事業者のままでは受注が減りそうな気配を感じたら、課税事業者になって受注を増やしていこうという判断もあると思います」
消費税率の引き上げがあったら?
先日、経団連会長が、少子化対策の財源として「消費税の引き上げが“有力な選択肢”」と発言してプチ炎上したが、消費税率が引き上げられたら、免税事業者から課税事業者となった人の税負担は相当なものになる。今後、消費増税が起きる可能性についてはどう考えればいいのか?
「免税事業者のままでいれば、消費税率が上がったときの影響は軽減されるでしょう。でも、その一方で、消費税率が上がると発注者側はより一層、『免税事業者との取引は損』と考えるようになるかもしれません。そうなると、仕事が減るリスクは高まります。どちらのリスクをとるのかは考え方次第ですね」
未来がどうなるかは予想しにくいが、いまだ、どうするか迷っている個人事業主にとって、小林さんの視点は参考になるだろう。ただ、仕事の内容やとりまく環境は人それぞれ。自分自身で見極めていく必要がありそうだ。
「たとえば、取引先との関係が人と人との繋がりで成り立っているのであれば、仕事が減るリスクは少ないかもしれません。一方で、クラウドソーシングで不特定多数の人との取引がメインだと、インボイス登録があるかどうかで選別される可能性は高くなります。フリーランスのみなさんはリスクとリターンを考えて行動されていると思いますが、仕事を続けていくためにどんな動きが必要か、自分で判断しようとしていく姿勢がより求められると思います」