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【インボイス制度】元国税専門官ライターが適格請求書発行事業者登録を見送った事情 「受注が減りそうなら課税事業者になる」という判断も

懸念される独立や企業への影響

 それにしても不思議なのは、インボイス制度はどうしてこんな、すったもんだのままスタートすることになったのか?ということだ。

 それについて小林さんは、「インボイス制度と消費税免税の議論を一緒にしたことが原因」だと指摘する。

「インボイス制度はそもそも、2019年10月に消費税率引き上げにともなって軽減税率が導入され、8%か10%かをきちんと区分しましょうという話でした。適用税率を記載するのは消費税の納税のため、税務署のチェックのためには必要で、そのルール自体は必要なものだったと思います。請求書の記載ルールとしてのインボイス制度は、それはそれとしてスタートさせ、免税制度に問題があるのであれば、それは別の改正法などの方向で議論すべきだったと今は思います」

 見落とされた議論はたくさんあるだろう。

「私がひとつ気になっているのは、独立や起業への影響です。独立や起業したばかりの人にとって、消費税の免税制度はありがたいものです。私自身、フリーランスになり、消費税の10%分も収入となることで助けられていた時期がありました。そもそも国は、起業や開業を促進するという方針を打ち出しています。インボイス制度はそれと真逆に働く政策ですから、何かしら独立や起業向けの支援政策があるといいと思います」

 個人としては決められたルールの中で生き残っていくしかないが、「決まったこと」だと議論をやめず、環境や状況に応じた柔軟な姿勢で制度を見直してもらいたいものだ。

【プロフィール】
小林義崇(こばやし・よしたか)/フリーライター・元国税専門官。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、東京都内の税務署や東京国税局、東京国税不服審判所で相続税の調査や所得税の確定申告対応などに従事。2017年、フリーライターに転身し、書籍や雑誌、ウェブメディアでお金に関する情報を発信。YouTubeチャンネル『フリーランスの生活防衛チャンネル』も話題。『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』 (PHPビジネス新書)、『元東京国税局職員が教えるお金の基本』(幻冬舎)、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)など、著作多数。

取材・文/鈴木靖子

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