米国10年債を上回るS&P500の利回り
次に、「イールドスプレッド」を見てみましょう。これは、株式と債券の利回り差を示すもので、それぞれの利回りを比較することで相対的な割高感・割安感を評価する指標です。
米国債の10年債利回りは現在、4.4~4.5%程度で推移しています。
それに対して、株式の利回りは「益利回り」といって、「PER(株価収益率)」と逆数の関係にあります。PERの計算式は、株価÷EPS(1株益)で求めることができますので、益利回りについては、EPS(1株益)÷株価で計算していくものです。
9月22日時点のS&P500のPERは19.86倍です。PERの逆数である益利回りは、株価の下落によって5%を超えてきた計算になります。単純な比較からは、株式(S&P500)の方が利回りが高いという状態になってきています。
金利高は続くものの景気は強い
しかし、単純な利回り比較だけでなく、リスク、金利見通し、業績見通しも考慮しなければいけません。国債は安全資産と呼ばれ、満期まで保有すると元本が保証された上で、確実な利回り(約4.5%)を得ることができます。
対照的に株式はリスク資産と呼ばれ、元本の保証はなく、変動幅が大きいため、期待できるリターンが高いことがある一方で、損失のリスクも存在します。確実性や安全性を求めるなら今でも米国債が選ばれることが多いでしょう。
しかし、常に将来を見据え先行して動くのが株式市場です。9月FOMCで発表されたドットチャートから今後の金利の見通しを踏まえると、年内に1回の追加利上げの可能性は残るものの、利上げは最終局面に差し掛かりつつあります。
高い金利が維持されることが株式市場では懸念されてはいますが、裏を返せば景気が強い証拠ともいえます。そうであるならば、業種によって異なりますが、企業業績は一定の水準を維持できる可能性があり、イールドスプレッドの観点から、時間とともに相対的には株式の魅力が増してくる可能性が高く、S&P500についてはそろそろ下げ止まる可能性は高いのではないか?と分析しています。