国内の通信・IT企業の多くが加盟する民間団体「フィッシング対策協議会」の発表によると、今年8月のフィッシング報告件数は9万9587件だった。その内訳は大手ECサイトのAmazonを騙るものが最多(36.1%)で、次いで三井住友カード、ヤマト運輸、Appleなど、誰もが知る企業を騙るメールなどが多いという。それらのサービス・商品は利用者が多い分、ついクリックしてしまい、フィッシングサイトに誘導されて個人情報を盗まれるなどの被害に遭うケースが後を絶たない。特に、ITリテラシーの疎い人は要注意で、そうした詐欺メールが自分に届くはずがないと思いこんでいる人もいるようだ。新刊『誰にだって言い分があります』が話題のフリーライター・吉田みく氏が、50代女性会社員のケースを報告する。
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パソコンやスマートフォンなどに、知らない相手からメールやメッセージが届いた経験がある人は多いだろう。筆者のもとにも月に数件、URL付きだったり長文の英語で書かれたメールが届くことがある。パッと見て、怪しいものであれば破棄するが、最近は実在する会社を名乗って詐欺サイトに誘導するケースが増えてきている。
埼玉県在住の会社員・アオイさん(仮名、59歳)は、仕事で使うアドレス宛の不審メールで、フィッシングサイトに引っかかりそうになったことを話してくれた。
「会社のメールアドレスに宅配業者からの連絡が来ており、“お荷物について。重要なお知らせが届いています”みたいなメッセージとURLの記載がありました。『まさか!』と心臓がバクバクしちゃいました」(アオイさん、以下同)
慌てたのには理由があった。アオイさんは業務中の空き時間に通販サイトを閲覧していたのだ。アオイさんの職場では時期によって業務がなく暇な時もあるそうで、そのような時にネットサーフィンをしているという。
「私としては通販サイトを閲覧していただけのつもりでしたが、知らず知らずのうちに注文していたのかな……と思ったんです。他の社員さんたちもネットサーフィンはしていますが、さすがに通販サイトで買い物する人はいない模様。それが、宅配業者から私に直接メールが来たと思い、『周囲に知られる前に対処しなくては』と考えたんです」