ネット上でしばしば見られる『たばこ店は、戦争未亡人の為に国が雇用を用意した救済措置の一つ』といった書き込み。未亡人かどうかはさておき、たしかにたばこ店といえば住まいの一角に作られた店内におばあちゃんが座り、一人で切り盛りしているイメージもあるが、一体その噂は本当なのか。
真実を探るべく、「たばこと塩の博物館」に向かった。答えてくれたのは学芸員、青木然さんだ。
傷痍軍人や遺族への優遇措置、陸軍からの要請だった
「結論から言えば、たばこの専売制度のなかで、戦争未亡人に対し優先的にたばこ店を開業できるような仕組みがあったのは事実です」(青木さん。以下「」内同)
まず、たばこの税金と専売制度の歴史を振り返る必要がある。
たばこ税は明治時代、国家の財源確保のため、明治9(1876)年からかけられるようになった。大別して営業税と印紙税で、営業税は卸売業者やたばこ店から営業許可と引換えに、また印紙税はたばこの定価によって包装に印紙を貼り、徴収していた。
しかし収入印紙の再利用などによる脱税が横行。その後日清戦争(明治27(1894)年7月~明治28(1895)年4月)後の国家財政を補う目的もあり、税を正確に徴収するため、明治31(1898)年に『葉煙草専売法』が誕生した。
これは葉たばこをすべて政府が買い取り、民間のたばこ製造業者に販売するものだったが、結果的に葉たばこの不正取引や安い輸入品の国内流入を招き、税収増という政府の目論見は外れてしまう。