太平洋戦争後は優遇装置がより効力の強い法律として制定
時代は変わり昭和になると、今度は太平洋戦争が起こる。動員人数は日露戦争に比べてはるかに多く、戦争未亡人も続出した。
「なかなか女手だけでは生活できないという問題を解決するため、厚生省(現厚生労働省)は昭和27(1952)年、『母子福祉資金の貸付に関する法律』を設けました。
ただし、戦争未亡人の救済を想定しているとはいえ、法律の文面に“戦争”というワードはありません。“配偶者のない女子であって現に児童を扶養している者”全体を対象に、たばこの小売人指定申請を優遇する内容です。
戦前に専売局が設けた優遇制度は、戦闘又は公務による傷病者や死者の遺族だけを対象にしたもの。なお福祉資金の貸付は昭和24(1949)年に制定された『身体障害者福祉法』にも設けられており、この2つの法律によって、身体障がい者と母子家庭全般へ対象が広がったことになります」
さらに『身体障害者福祉法』と『母子福祉資金の貸付に関する法律』には、公共施設の中に売店を設置するための許可を優遇する規定も設けられた。現在『母子福祉資金の貸付に関する法律』は『母子及び父子並びに寡婦福祉法』と名を変え、たばこ小売人許可の優遇措置についての記述も残されている。
「太平洋戦争後、優遇措置がより効力の強い法律として制定され、対象も広がりました。そうしたこともあって、自宅の一角にたばこ売り場を構えるお店が多数登場。そのお店の人が年齢を重ねたことで、“おばあちゃんがやっている街のたばこ店”が、全国各地で見られる風景になったのです」