9月25日、アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」がついに日本で承認された。レカネマブはこれまでの認知症薬とは異なり、認知症発症の原因とされる物質に直接効果を発揮する“夢の認知症薬”とされる。
ただし、先行して承認されたアメリカでは年間治療費が約390万円とされ、日本で保険適用されたとしても薬価は高額になるとみられる。年末までに詳細が決まるとされるが、薬価や対象患者の選定方法など不明な点は多い。レカネマブの治療を受けるにはどんな条件が必要で、薬価に見合う効果を得られるのか。
現時点で考えられるレカネマブの効果とリスクを見ていく。
アルツハイマー型認知症患者の脳には、アミロイドβやタウと呼ばれるタンパク質が溜まっている。それらが蓄積する過程で神経細胞が破壊され、脳が萎縮して認知症が進行していくとされる。レカネマブは、原因物質であるアミロイドβを除去し、症状の進行を抑える効果が確認されたことで承認につながった。認知症専門医で新薬の治験に関わってきた眞鍋雄太医師が解説する。
「昨年9月に発表された治験結果では、服用した人はアミロイドβを約60%減らし、服用していない人と比べて認知症の進行スピードが27%減じた。1年6か月の治験期間に対して約7か月間進行を遅らせたと報告されています。3年投与すれば約1年間、6年投与すれば約2年間進行を抑制できる可能性がある」
多額の費用と身体への負担の2つの懸念
眞鍋医師は「画期的な認知症薬と言える」と語るが、一方で治療を受けるためにはハードルもある。
「レカネマブの対象はMCI(軽度認知障害)から初期の認知症レベルのアルツハイマー病に限られるため、保険適用で治療を受けるには専門医の診察と検査でMCIやアルツハイマー病と診断されることが必須となります」
その検査には、多額の費用と身体への負担の2つの懸念があるという。
「アルツハイマー病の診断には放射性薬剤を投与するアミロイドPETや、背骨の間に針を刺して髄液を採取する脳脊髄液検査を受けてアミロイドβの蓄積を確認する必要がありますが、これらの検査は経済的、身体的負担が少なくない。費用は保険適用外で前者が30万~60万円、後者が総額で約2万円ほどかかります」(眞鍋医師)