急病や大けがをした際、「命綱」となるのが119番通報。だが近年、救急車を手配する消防の指令センターに「電話がつながらない」ことが常態化しているという。何が起きているのか。
〈不要不急の電話については、最後までお話を聞かずに切断する場合があります〉
9月に入り、東京消防庁がX(旧ツイッター)に投稿した内容が話題となっている。119番通報が大変混み合っており、「必要な緊急通報を優先するための措置」として理解を求めるもので、これまで複数回、投稿されている。119番が緊急通報ダイヤルなのは誰もが知ることだが、消防当局がこうした呼びかけを繰り返すのはなぜか。
同庁によると、異例の猛暑が続いた今夏は、熱中症による出動要請に加え、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザによる発熱患者の増加により、救急要請が連日続いているという。
「昨年の通報受付件数は現在の統計方法を採用以来、最多となる103万件超を記録しました。今年は9月末時点で昨年比5万4000件増加しています」(東京消防庁)
SNSでは9月以降も「通りすがりに熱中症と思われる方を介抱しながら119番に通報したが、つながるまで5分以上かかった」等の投稿が散見され、今も逼迫した状況は変わらないようだ。
都内で訪問診療を手掛ける内科医の田代和馬医師(ひなた在宅クリニック山王院長)が言う。
「今年9月、私の患者さんから『右半身に力が入らない』との連絡を受けました。脳卒中など一刻を争う血管系疾患が疑われたので、受け入れてくれる病院をすぐに手配し、搬送のために119番通報で救急車を呼ぼうとしたところ、コール音が鳴るだけで、30分近くもつながらなかったのです」