急病や大けがをした際、「命綱」となるのが119番通報。だが近年、救急車を手配する消防の指令センターに「電話がつながらない」ことが常態化している。9月には東京消防庁がX(旧ツイッター)に〈不要不急の電話については、最後までお話を聞かずに切断する場合があります〉と投稿したことも話題になった。
都内に限らず、同様の傾向は全国的に報告されており、なかには、こんな呆れた不要不急の通報もある。関東地方の消防本部に勤務する救急隊員A氏が言う。
「“寂しいから来てほしい”“停電をなんとかしてほしい”“介護が必要な母親のおむつを替えてほしい”といった通報は珍しくありません。さらに悪質なのは、通院時のタクシー代わりに救急車を呼んだと思われるケースがあることです」
そうした場合でも、罪に問われることは稀で費用請求されることもない。
「通報者に『辛いから病院に連れて行ってくれ』と言われれば救急隊は断われません。その訴えが本当かどうかの証明はできないからです」(同前)
関西地方の救急隊員B氏も「全体の1~2割は不要不急の印象」と言う。
「『動けないからすぐに来てくれ』と要請されたのに、到着すると通報者が辛そうな様子もなく、荷造りを済ませ準備万端で玄関で待ち構えていることがある。正直『タクシーで行けたのでは』と思ってしまいます」
一方、近年多発しているのがスマートフォンの誤作動による通報だ。
「これも全体の1割に達する印象です。指令センターに入電しても無言の状態が続き、こちらからの折り返しにも応答がない場合は『通報者が倒れている状態』を想定しなければなりません。GPSで位置情報を特定したり、携帯キャリアに情報提供を要請するなどして現場に急行しますが、自宅にいきなり救急隊員が現われて驚かれることもあります」(同前)