2023年の海外投資家の動き
日本株市場は、2023年前半にバブル以降の高値を更新しました。この動きの背後には、海外投資家の強力な買いがありました。4月初旬から6月中旬までのデータを見ると、海外投資家は11週連続で買い越しを行い、その合計は約6.18兆円にも達していました。しかしその後、6月下旬からは買いの勢いが鈍り、8月以降はここまでの7週間のうち6週間が売り越しになるなど、売り越しの傾向がかなり強まっていたのです。
9月のTOPIX購入者は誰か
一方、TOPIXが高値を更新し続けたのはなぜだったのでしょうか。投資主体別のデータによると、大量の買い越しを行っていたのは「証券自己」でした。これは、証券会社が自らの資金で行う取引を指します。実際、8月から9月にかけての証券自己の買い越しは3.18兆円に上り、この期間の海外投資家の売り越し額の合計である2.45兆円を上回っていました。
9月の上昇相場で目立っていたのは、主に時価総額が大きく、TOPIXへの影響度が大きい銘柄でありながら、PBR(株価純資産倍率)1倍割れのバリュー株や、高配当株、金融政策の修正期待から銀行や証券株の上昇も目立っていました。これらを大きく買い越していたのは、海外投資家ではなく、個人投資家でもなく「証券会社」であった可能性を、投資主体別売買動向が物語っています。
10月以降の見込み
今後の日本株市場の動きの鍵を握るのは、海外投資家の動向であることは間違いないでしょう。
海外投資家が大幅な売り越しに転じたのは8月第3週です。この週には7600億円以上の大幅売り越しとなっています。この時に何が起きていたかというと、米長期金利が近年で最もインフレ懸念が強かった2022年10月頃の高い水準(4.335%)へ向かって急上昇していたタイミングでした。
その後も、インフレへの対応から、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が高い金利を維持するであろうと予測され、米長期金利は4.8%台をつける場面がありました。金利上昇により米株安が進行して、リスクオフとなり、上昇が目立っていた日本株からも利益確定の動きが入っていたのではないでしょうか。