いくら仲のいい夫婦でも、同時に亡くなることは極めて稀だ。ある日突然、連れ合いに先立たれて「ひとり」に──そうなる可能性は、夫にも、妻にもある。だからこそ夫婦で元気なうちから「必要な備え」と「やってはいけないこと」を知る必要がある。
「仕事中心の人生」の問題点
65歳以上の「ひとり暮らし」が急増している。最新の高齢社会白書によると、2020年の〈65歳以上の一人暮らしの者〉の数は、40年前の実に7倍以上にあたる約671万人にも上る。
長生きする傾向がある女性のほうが約440万人と多いが、男性でも約230万人もいる。65歳以上の男性の約15%を占める数字だ。
離別、死別、生涯独身など理由は様々だが、今後も高齢の単身者が増加するのは間違いないと予測されている。
いずれ訪れるかもしれない「ひとり」の老後。どうせなら少しでも豊かにしたいが、現実はそう簡単ではない。
「とりわけ男性が妻に先立たれると、身の回りの家事などができずに深刻な問題になることが多い」と語るのは、シニア生活文化研究所代表理事の小谷みどり氏。今回は、識者への取材をもとに、妻に先立たれた際の「孤立リスク」のチェックリストを作成。複数項目に当てはまる人は、夫婦ともに元気なうちから備えが必要だろう。
ひとりになった男性が直面する困難には、大きく分けて2つあるという。1つ目は、仕事中心の人生を送ってきたことによる弊害だ。今の60代後半以上は男性が外に働きに出て、女性は家で専業主婦というパターンが多かった。
「普段から近所付き合いのある女性は地域に友達がいるのに対し、仕事を生きがいにしてきた男性が退職すると、地域に友達が全くいない事態に直面するのです。だからといって、“他にすることもないから”と定年延長や再雇用を選べば問題はより深刻化します。いつかは退職するのに、問題を先送りして70歳を過ぎてから地域で友達を作ろうとしても、実際にはほとんど無理」(小谷氏)