一方で、夜のホテルのエントランスなどに乗り付けても高級車などにも引けを取らないような大人の表情を見せることもあります。若々しさとフォーマルさやエレガンスとの絶妙なるバランスは「やっぱりイタリアンはデザインがいいなぁ」と感心させられる部分です。同時に国産モデルに、こうしたデザイン手法での成功例がほとんど存在しないことを思うと、少しばかり残念な気持ちになりました。ちなみに500eのライバルとして取り上げられるBEVの「ホンダe」のデザインは「初代シビック」へのリスペクトを感じさせると同時に愛らしさもあると言う仕上がりで、国産の数少ない成功例かもしれません。
電費とバッテリー容量のバランスがちょうどいい
デザインで「欲しくなる理由」のひとつをクリアした500eですが、他に魅力を感じさせる部分はどこでしょうか？ 「環境性能の高いBEVだから」というのは、すでに主たる購入理由とはいえないかもしれません。エンジン車も最近では燃焼効率を上げてきましたし、PHEV（プラグインハイブリッド）など、充電生活だけに頼らない使い勝手のいい電動車も多くあります。その上で500eはBEVとしての優位性を発揮して多くのシステムのクルマと戦わなければいけません。要するに「充電に頼るカーライフ」の現状をどう捉えるか、です。
BEVを始め、PHEVなど充電できる車両を購入した場合、多くの人が200Vコンセント（～4kW）やポール型の普通充電器200V（6kW）といった設備を家庭に設置すると思います。フィアットのカタログでは、EV用の200Vの屋外コンセントは3kW充電対応のパナソニック製で本体価格が約 7000 円から。より高出力の6kW充電に対応する専用の充電器を設置するには18万7000 円（税込）～となっています。そうした家庭用施設で500eを充電する場合ですが、200Vコンセント（3kW）で14時間ほど、6kWで7時間ほど満充電までにかかります。もちろんこれは充電残量や外気温などによって差が出ますが、おおよその充電時間です。近所での買い物や通勤ならば42kWhのバッテリーを搭載し、一充電あたりの走行距離が335km（WLTCモード）という500eであれば、途中充電の必要をほぼ考えなくていいでしょう。
一方で懸念されるのはロングドライブです。「どうせ小さいクルマだから走行距離も短いんでしょ」と考えるのが普通。ところが500eを370kmあまりのロングルートで走らせてみると、その平均電費はなんと「9.0 km/kWh」を達成してくれました。この電費をもとに「電費×バッテリー容量」という計算から走行可能距離を導き出すと378kmとなり、今回のルートなら無充電でも走れることになります。ただこれは、あくまでも計算上ですから、実質は300km少々と考えた方が無難でしょう。今回の370kmほどのドライブルートでは途中で急速充電したのは、バッテリー残量が40％になったときの1回だけ。通常、ドライブ途中で30分程度の休憩を取ることは当たり前ですから、充電ストレスをほとんど感じることなく500eでのドライブを楽しむことができました。これで帰宅し、自宅で充電を行えば、翌朝までには満充電になりますから、使い勝手は悪くありません。
BEVの場合、確かにバッテリー容量の大きなクルマの方が一充電あたりの走行距離は伸びますが、外出時の急速充電時には時間がかかります。そうしたことを考えると電費が9.0km/kWh、バッテリー容量40kWhといったスペックが、けっこうバランスがいいように感じました。
こうして充電ストレスをあまり感じなくなると気分もさらに軽くなり、ルーフをオープンに。ようやく秋の爽やかさを感じるドライブは500eのおかげでずいぶんと楽しいものになりました。高い静粛性を保ちながら市街地や近所のショッピングでの走りも味わい、休日になればアクセルにレスポンス良く反応し、トルク感たっぷりの走りに支えられながらの休日ドライブ。ファッショナブルでコンパクトなボディと、小回りのきく扱いやすさが実現する軽快な走りはまさに「トッポリーノとしての面目躍如」といったところです。
17インチのダイヤモンドカットのホイールが足元を引き締め、自然の中だけでなく都市の風景の中でも存在感を発揮する
