ポルシェのエントリーモデルとして人気があるミッドシップスポーツ「718ケイマン」。その718ケイマンにおいて、「さらなる高みを求めたモデル」として登場したのが、ハイパフォーマンスモデル「GT4 RS」だ。最大の注目点はポルシェの象徴的モデルである911のトップグレード「ポルシェ911 GT3」と同じエンジンを搭載していること。自動車ライター・佐藤篤司氏によるシリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は、911より軽量でコンパクトなボディながらパワフルなエンジンを持つ同車を、実車してレポートする。
刺激的であることを約束されたクルマ
こういうクルマを見ていると「本当に人間の欲望とは、果てしないなぁ」と思ってしまいます。
8年前の2015年12月、クーペモデル「ケイマン」と、そのオープンモデルである「ボクスター」の車名が少し変更されました。ポルシェの往年の名レーシングモデル、「718」という名を冠して「718ケイマン」「718ボクスター」として登場したのです。年々進化を重ねてきたモデルで、ノーマルでも十分に刺激に溢れたスポーツカーでしたが、伝統ある名を冠したことで、さらに切れ味は増していました。
そして、一昨年の11月、「718ケイマンGT4 RS(以下、GT4 RS)」という、まさに718ケイマンのシリーズ中、最上級に位置する最強モデルの予約注文受付が始まり、「ついに来たか」と感じました。同時に、乗る機会があっても「なるべく乗らずにすまそう」と、自分の欲望にフタをしました。一度そんな味を経験してしまうと、これまで十分と思っていたノーマルモデルに不足を感じてしまうのが怖かったからです。確実に刺激的で、その感覚はもはや悦楽と表現してもいいことは、容易に想像できました。
ところが、いま、目の前には「手を出すまい」と思っていたGT4 RSがあり、数日間乗ることが許されているのです。「本当に人間とは欲深きものか」と、改めて自戒する瞬間でしたが、気が付けばドアを開けて乗り込み、全身をかっちりとホールドしてくれるシートに身を預け、ノーマルの300馬力から一気に200馬力アップし、500馬力というスペックを誇示する水平対向6気筒エンジンをスタートさせているのです。もうこの辺までくると「どうにでもなれ」という気分です。