人生100年時代。働き方も大きく変わり、定年後も働き続ける人が増えている。仕事に生きがいを求める声も多く、収入と生きがいを両立させながら“人生後半戦をどう生きるか”が問われる時代にある。60歳を過ぎて資格に挑戦した人に話を聞いた。
69歳の時に通信制の大学に入学
「学芸員という資格は、副業とかキャリアアップのために取ったものではないんですよ」
そう語る羽田久美夫さん(73)は、現役の歯科医で自ら絵筆を持つ美術愛好家でもある。地域の活動で趣味の美術について定期的に講演をする機会があり、それが資格取得のきっかけになったという。
「毎回、美術館に足を運んで取材をして講演の内容を練りましたが、回を重ねるごとに何を話すか悩むようになりました。そのうち、“どうせならもっと専門的な知識を身につけたい”と思うようになったのです」
趣味を究めたいと学芸員の資格取得を目標に定めた羽田さんは、69歳の時に通信制の大学に入学した。それからの2年間、歯科医と学生の二足の草鞋を履く生活を送ったという。
「通常の診療以外に週に1度の訪問診療もあるため、勉強の時間を作るのに工夫が必要でした。オンラインでの講義が中心の大学を選んだのですが、1年目は失敗してしまって……。
初めに入学した放送大学の必須科目である美術館での実習が通うには遠方で断念せざるを得ず、一度退学して他の大学に入り直しました。必要な科目の履修だけなら1年で取れるはずだったのですが、結局2年間勉強することになった。ただ、美術好きの若い人たちともコミュニケーションができて、今ではいい経験になったと思っています」