定年後の働き方が多様化する今の時代、“60歳以降にどう稼ぐか”は多くの人にとっての関心事だ。そうしたなか、“人生後半戦”での生活を充実させるため、資格を取得する人も増えている。シニアのセカンドキャリアを支援する銀座セカンドライフ代表の片桐実央氏はこう言う。
「シニアになってから独立する人が年々増えています。それに伴い資格に注目が集まっています。資格取得が独立や再就職に有利なのは当然ですが、それだけではありません。
特に男性は、会社以外での人脈を作るのが苦手で、退職後は社会から孤立する人もいます。60歳を過ぎてからでも資格に挑戦し、その分野で仲間を増やせると、その後の人生を豊かにできる可能性が広がる。資格取得にはそうした利点もあるのです」
資格取得を機に独立した人に話を聞いた。
三菱電機に入社、50歳で子会社に転籍
「50歳から定年までの10年間はキャリアのことで悩みました。その時の苦労が後の資格取得につながりました」
そう語る草場信夫さん(62)は、60歳でコーチングの民間資格であるチェンジングフォワードコーチの資格を取得した。
新卒で三菱電機に入社した草場さんは、IT技術者として順調にキャリアを積んだが、50歳で子会社に転籍となった。
「その後、もとの親会社に逆出向となり、役職を引き下げられるという処遇を何度か受けました。当時は、定年退職後のキャリア形成に悩んでいました」
そんな折、58歳で受けたコーチングが草場さんを救うことになる。
「コーチングとは、キャリアなどに悩む相談者の潜在意識に働きかけて自ら答えを出させることです。コーチが『70歳になった時にあなたはどんな人になっていたいのか』『それにはどういうスキルが必要か』といった質問を重ね、相談者自身が答えを見出していくのです。私自身、コーチングを受けることで、将来のキャリア形成についての課題を具体的に整理できました」