シニアにとって課題となるのが「お金」と「再就職」だ。再雇用や転職、独立などさまざまな形で、定年後も働き続ける人が増えたいま、資格取得はキャリアを形成する上でも重要な要素になっている。資格を活かし、定年後の仕事を充実させている人に話を聞いた。
1日3時間、4か月間にわたって勉強
65歳まで雇用延長で働いていた明治安田生命を退職後、社会保険労務士として事務所を構える古川武人さん(70)は、高齢者の雇用支援に関するプロフェッショナルの顔も持つ。
「社労士事務所で仕事を受けながら、高齢・障害・求職者雇用支援機構が認定する『70歳雇用推進プランナー』としても活動しています」
70歳雇用推進プランナーは、企業の実情に即して、定年延長や再雇用などシニア労働力の活用に関する助言や提案を行なう。
「そうした活動のなかで、キャリア設計の重要性に気づかされました。それからキャリアコンサルタントの勉強を始め、67歳で資格を取得しました」
キャリアコンサルタントの試験は学科と実技があり、古川さんは4か月間にわたり1日3時間ほどの勉強をして学科試験はパスしたものの、実技試験に苦戦した。
クライアントへの助言を通じて従業員がキャリアについて抱える問題を可視化するのがキャリアコンサルタントの役目だ。答えを用意するのではなく、クライアントが答えにたどり着くように導くのが鉄則だという。
「サラリーマン時代は顧客が抱える問題に対して答えを提示するのが私の仕事でした。だからついついそのクセが出てしまう。しかし、キャリアコンサルタントは答えを示すよりも相手に考えさせることのほうが重要。『古川さんは問題解決思考が強すぎる』と、何度も注意されました。これを直すのにはかなり苦労しましたね」