経営コンサルタントの大前研一氏は、超高齢社会においては、いかにシニア層のニーズを取り込んだビジネスを構想できるかが日本経済全体の活性化につながると指摘する。では、具体的にシニア層に支持されるビジネスにはどのようなものがあるのか? 最新刊『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』が話題の大前氏が解説する。
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今回は、約1200兆円のポテンシャルがある日本のシニア市場開拓のヒントになる例を紹介します。
出版不況と言われている中でも、シニア世代の中高年女性を主な読者対象として、一人勝ちしている雑誌があります。『ハルメク』という月刊誌です。
出版元のハルメク社は、私が主宰している経営者の勉強会「東京向研会」会員の宮澤孝夫さんが代表取締役社長を務めています。当初は『いきいき』という雑誌名だったのですが、『ハルメク』に変え、さらに女性誌で経験を積んだ山岡朝子さんを編集長に迎えてリニューアルしました。
この雑誌の作り方は、普通の出版社と全く違います。私も様々な出版社との付き合いが非常に長く、いろいろな雑誌で記事を書いていますが、ほとんどの出版社では、自分たちで編集して、それを売って、部数を増やして広告を取る、というやり方を当然のこととしてやっています。
それに対して『ハルメク』は広告がほとんどなく、基本的にはシニアの女性を中心に据えて初歩の初歩から徹底的に解説していくという記事作りをしています。「スマホをもっと便利に使うコツ」とか「ネット活用法の基本のき」とかですね。編集者が上から押しつけるのではなく、読者みんなでこういうものを勉強していきましょうよ、という目線なんですね。