たとえば、「まごチャンネル」(チカク)。これは、テレビにつなぐだけで家族などがスマホから送った写真や動画がテレビで見られるというサービスです。その名のとおり、孫や子供の様子をシニア世代の親が見るというものですが、その逆に、遠く離れた老親の健康状態などを子供が知ることもできます。
それから、「もっとメイト」(MIHARU)。同社のスタッフが、高齢者の自宅に直接訪問して、スマホやパソコンの使い方を教えたり、ちょっとした話し相手になったり、あるいは買い物のサポートをしてくれるというサービスです。
同じように、アメリカには「Papa」というサービスがあり、これはうまく事業化すれば日本でもビジネスになると思います。
どういうものかというと、孫ぐらいの世代の若者が来て、話し相手になってくれるだけでなく、パソコン操作とかいろいろなことを手伝ってくれて、何かあったら車を運転して送り迎えなどもしてくれるというものです。若者や学生にとっては、コンビニや飲食店でアルバイトするよりも時給が高いアルバイトになると思いますし、シニアにとっては、まるで孫が同居してくれているような感覚になれるというサービスですね。
さらに、これをもう一歩進めて、昔はよくあった「下宿」というスタイルを復活させると、もっと充実するでしょう。今では下宿はほとんどなくなってしまっていますが、このようなものが事業としては可能だと思います。
必要なのは、シニア層が今どんなことに不安や不満を感じているかを丹念に汲み取って、それを解消するにはどうしたらよいかを考えることです。そこに、ビジネスチャンスがあると思います。
(大前研一・著『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』より一部抜粋して再構成)
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』(小学館新書)など著書多数。