相続財産は預金や現金、不動産、株式など多岐にわたり、完璧に平等に分けることは難しい。だからこそ、法的にも心証的にも“正しい遺言書”をつくっておく以外に、トラブルを予防するすべはない。
「認知能力に問題が生じてから書かれた遺言書は無効になる可能性があります。遺言能力があるうちに、正しい書式で“誰に、何を、どんな割合で相続させるか”を明確に示しましょう。作成した遺言書は、生きているうちに相続人に公表しておくのがもっとも理想的です。
また、遺産の分割理由を付言事項として残しておくことで意思が伝わりやすく推奨されますが、“親不孝者の次男にはこれだけしか渡さない”といった不平等な分割を説得するような内容はかえってトラブルになりやすいので避けた方がいいでしょう」
生前贈与したせいで相続税がかかることも
あらかじめ財産を渡しておく「生前贈与」も相続対策の定番。だがこれも、やはりトラブルを未然に防げるとは限らないうえ、金額によっては相続税が課せられることもある。 生前贈与の主流は年間110万円までの贈与が非課税になる「暦年贈与」だが、必ずしも税金がかからないというわけではない。亡くなる3年前までの贈与は“相続財産の先渡し”として、遡って相続税の対象になるのだ。さらに来年1月1日以降に発生した贈与では、持ち戻しの対象期間が「7年前まで」に延びることが決まっている。