できるだけ相続財産に持ち戻されないようにするには早めに暦年贈与をしておくしかないが、子供や孫が小さいうちから贈与を行う際は「名義預金」に気をつけなければいけない。神奈川県在住の主婦・Aさん(78才)が肩を落とす。
「今年で18才になる孫が生まれたときに口座をつくって息子夫婦に通帳を渡し、その口座に毎年せっせと110万円を入れていました。2000万円近く貯まっていたはずです。でも、孫本人に贈与していることを伝えていなかったために“孫の名義を使って預金している”と見なされてしまい、息子から“贈与税を払わなければならなくなった”と聞いて、ガックリしました」
贈与税は場合によっては相続税よりも高くつくケースもある。そして、その贈与税を払わなければいけないのは「お金をあげた側」ではなく「もらった側」。祖父母から合計1980万円もの贈与を非課税で受けられていたはずのAさんの孫は、贈与を受けていることさえ知らないまま、贈与税を払うはめになってしまったのだ。
このとき「贈与税が払えるように、その分のお金も渡す」という方法は絶対に取ってはいけない。当然ながら“贈与税分”のお金も贈与に当たるため、課税対象金額が増えるだけなのだ。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、老後資金は「自分たちのために使うお金」「もしものときに備えるお金」、そして「子供や孫に残すお金」の3つの目的に分けたうえで、それぞれの必要額や使い道を具体的に考えるべきだと話す。ただやみくもに切り詰めるのも、増やそうとするのも、残すのも間違い。まずは「何のために、どれくらいのお金が必要か」を、夫婦で話し合ってみてほしい。
※女性セブン2023年11月2日号