株式相場が不安定な中、決算後に大きく株価を上げる銘柄も存在する。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が、3つの銘柄をピックアップし、決算の内容や決算後の値動きなどについて解説する。
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アメリカ市場はこれから決算シーズンを迎える。ハイテクなどの外需産業が度重なる利上げによってドル高という逆風を受け、その環境下で好決算が出せるのか不安視されている。また、アメリカの2023年の倒産件数はコロナが発生した2020年と同水準となり、2010年以来最高となった。その原因の一つとして、消費者が高金利による記録的なクレジットカード債務を抱えてしまい、企業側が「とりっぱぐれ」になっていることが挙げられている。
最近の日本マーケットの不調は、海外の不調が大きく影響している。日本だけの事情で考えれば、ドル高円安で恩恵を受ける企業は多く、上方修正が相次いでいる。しかし日本マーケットが多くの海外投資家に売買されている以上、海外の投資センチメントが悪化すれば日本もその影響は免れない。
そして、市場全体の雰囲気が悪くなれば、個別銘柄もその影響を避けられない。良い決算を出しても全体地合いに飲み込まれ、株価が下落していく。
しかし、この厳しい相場環境においても株価を上昇させている銘柄がある。このような企業は好決算に加え、プラスアルファで加点項目がある。そのプラスアルファの部分によって、市場が悲観的であっても、それを跳ねのけて株価上昇に導いている。
今回は、この悪い相場環境のなかで決算後に大きく株価上昇した3銘柄について分析した。
【1】ファーストリテイリング(9983)
10月12日に本決算を発表したファーストリテイリングは、ユニクロでお馴染みだが、他にもジーユーやセオリー、グローバルブランドといった事業も抱えている。
2023年8月期決算において売上高は前年比+20.2%、営業利益は前年比+28.2%という素晴らしい成果を発表し、時価総額11兆円を超える巨大企業とは思えない圧巻の成長を見せつけた。売上や利益も過去最高業績を毎年のように連続更新し、新年度も過去最高を更新する計画を出している。また、配当の増額修正も行い、株主還元についても抜かりがない。
売上、営業利益の成長は、本業事業での成長を意味する。これらを見ると、時価総額10兆円を超える規模の大企業が、小型新興グロース企業なみの成長率を達成していることは、文句なしでインパクト大といえる。
株価は決算翌日に前日比で+5.7%、1940円上昇した。「日経平均はユニクロ指数」とも言われるほど、指数への影響度は強いが、同社の株価動向は日経平均の強さを映す鏡でもあり、今後も注目度が高くなるだろう。