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豊臣秀吉の朝鮮出兵は東アジア全体を「わやちゃか」にした その影響は「明の衰退・滅亡」にもつながった

豊臣秀吉の肖像と朝鮮出兵の様子。20世紀前半に描かれた西洋のイラスト(Getty Images)

豊臣秀吉の肖像と朝鮮出兵の様子。20世紀前半に描かれた西洋のイラスト(Getty Images)

 中国で、明朝の最後の皇帝の生涯を描いた歴史書が「販売禁止」となった。サブタイトルにつけられた「勤勉な亡国の王」という文言、ならびに同書のキャッチコピーが問題視されたと報じられている。歴史作家の島崎晋氏は、同書で取り上げられた「明の衰退・滅亡」とNHK大河ドラマ『どうする家康』にも描かれた豊臣秀吉の「朝鮮出兵」が深く関わると指摘する。島崎氏が解説する。

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 習近平政権下の中国で、また世界を唖然とさせる政策が下った。今回は“禁書”である。10月17日に共同通信が配信した記事〈中国、明朝の歴史書を回収処分「亡国の王」が習氏を連想か〉によると、標的となったのは、『崇禎:勤政的亡国君(勤勉な亡国の王)』という、一見、現在の政治とは関係なさそうな歴史書だった。

 崇禎(すうてい)とは明王朝のラストエンペラーの諡号である。同書は崇禎の一代記で、著者は今年の5月に死去した歴史家の陳梧桐氏。2016年12月、『崇禎往事』というタイトルで第1版が発売されたが、版元は改訂版を出すにあたり、タイトルを『崇禎:勤勉な亡国の王』と改め、表紙に「勤勉であればあるほど、国は滅びる」という宣伝文が加えられた。この改変が当局の癇に障ったようである。

 回収の理由について、表向きは、「印刷の問題」と発表されているが、現実には、改訂版のタイトルと宣伝文句が習近平国家主席を連想させるとして、事実上の販売禁止にされた可能性があると、共同通信の記事は結んでいる。

 思い返せば、習近平が敬愛してやまない毛沢東も、権力の奪回を目的とした文化大革命を発動するにあたり、北京市副市長にして歴史家でもあった呉晗(ご・がん)著の京劇戯曲『海瑞罷官(海瑞の免官)』に対する激しい批判文書を新聞に掲載させた。期せずして、これも明の時代を扱った作品だった。

 今回の禁書措置が習近平の指示によるのか、習近平に対する忖度によるのかは不明だが、筆者は明代絡みのこのニュースに接し、今年のNHK大河ドラマ『どうする家康』でも描かれた朝鮮出兵を思い出した。その連想は突拍子もなく思えるかもしれないが、豊臣秀吉による朝鮮出兵は明の衰退とその後の滅亡に関係していた。

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