「自動運転」では運送作業は終わらない
例えば、消費者の行動変容を促すための再配送の見直しだ。再配達率の半減に向けて自宅の玄関前などに荷物を置く「置き配」や、コンビニでの受け取りを選んだ消費者にポイントを付与する制度を導入するという。個人宅配には一定の効果はあるだろうが、輸送の多数を占める企業間の取引には意味をなさない。
物流の効率化策として打ち出した鉄道や船舶(貨物船)に代替する「モーダルシフト」の推進は、大きな方向性としては間違ってはいない。だが、運送会社の過当競争を放置したままではうまく行かないだろう。しかも今後10年で船舶や鉄道による輸送量の倍増も目指すとしている。これのどこが「緊急対策」なのか。
船員の不足も深刻だ。船の輸送力を増強するには港湾の規模や設備の拡充も必要となる。鉄道は自然災害に弱い。
そもそも、2024年に物流危機のピークを迎えるわけではない。人口減少に伴って事態は年々深刻さを増していく。「物流2024年問題」にとらわれて目先の対応ばかりをしていたのでは根本解決とはならない。
今後の運転手不足が出生数の減少によって引き起こされる以上、運転手が減ることを前提として考えざるを得ない。いま求められているのはその具体策だ。
機械化も1つの手段である。自動運転などに期待が高まっている。だが、運送業は自動運転のトラックを走らせるだけでは業務を完了できない。
例えば、大きくて重い冷蔵庫の配送だ。ドローンでは無理だろう。トラックの荷台から人が降ろし、住宅内に入って備え付け、これまで顧客が使っていた冷蔵庫を回収するところまでが「運送」作業である。現行の自動運転のトラックやロボットではここまでの作業はできない。