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介護現場で注目される「『よっこいしょ』は虐待か」問題 「自分のための掛け声」か「相手をモノ扱い」かの切り分けは難しい

虐待件数の増加をどう捉えるか

 高齢者への虐待事案は年々増加している。厚生労働省の最新の調査(2022年12月公表)によると、2021年度の介護事業者職員による虐待件数は前年度に比べ24.2%増の739件。自治体への相談・通報件数は14.0%増の2390件だった。

 これはあくまでも認知件数であり、背後にはさらに多くの虐待があるものとみられる。ただし、前出の田中氏は「認知件数が増えるのは悪いこととは限らない」とも言う。

「以前に比べ虐待防止の取り組みが活発になり、かつては“このくらいはいいか”と見逃されていた虐待も漏らさず報告されるようになっています。認知件数が増える背景には、そうした面もあると思います」(田中氏)

「よっこいしょ」を虐待として報告する実例は確認できなかったが、相手との関係性や言い方によっては、虐待事案として扱われることもあるのかもしれない。

「『1、2、3』の声掛けと同じように、利用者にリズムを取ってもらうための『よっこいしょ』はその人のための掛け声ですが、相手をモノ扱いした『よっこいしょ』も実際にあると思います。切り分けは難しいのですが、利用者を不快にさせないための工夫や努力はどんな場合でも大切なことだと思います」(田中氏)

「よっこいしょ問題」を議論すること自体は、不毛なことではないのかもしれない。(了)

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